TOPあれこれトピックス > 「ゆずりはの詩」出版のごあいさつ


 

   「ものと心」〜時を超えて受け継がれるもの〜
                                                            
         暮らしのクラフトゆずりは店主
                                                                                                  十和田観光ホテル女将
                                                                                                                     田中陽子

 この度、東北の手仕事を綴った『ゆずりはの詩』(主婦と生活社)を6月に出版しました。
  手仕事を伝え残すことと共に、その“心”が意義あるものとして、社会で理解され、作り手の経験や生き方を伝承してまいりたいと思い、出版に至りました。初の出版となりましたこの本は、日本本来の姿が今なお残る東北の先人たちの知恵・作り手の想いも合わせて、“もの”の向こう側に作り手の顔が見えるようにと書きためていたものです。
  私は、青森県十和田湖畔にあります、十和田観光ホテルの女将として約30年、また地元の手仕事を伝える活動を始めて、おかげさまで20年を迎えようとしています。当初は、北東北の工芸の地図を作り、一人ひとり作り手を訪ね歩くことから始め、わずか20名の作家からのスタートでしたが、現在は200名を超える作り手との出会いを数え、東北の手仕事を現代の暮らしに提案しながら交流を重ねています。
  東北には、厳しい気候・風土に培われた様々な手仕事が今もなお残っています。刺し子、籠、つるかじ、桜皮細工、馬具……。私はその中でとりわけ高齢者のものづくりとその人生に強く心揺さぶられました。必要とされ、ものを作るという手仕事の原点。その記憶が暮らしと共にある、わずかに今残る最後の人々がいました。
  巡る季節に素材を求めた自然に寄り添う暮らしは、もともと人も自然の一部として生きてきた日本の暮らしを思い起こさせるものでした。戦争、高度成長と、激動の時代を生きた人たちが、手仕事を通して人生の悲喜こもごもを語ってくれる時、かつての日々がそのまま息づいて伝わってきました。
  「雪景色の美しさは、その下に多くの事情を包み抱えているから……」。知人の言葉です。不便で、貧困な境遇だったからこそ、柔軟でたくましい手技を継いできた作り手たちに、人として大切なことを教えられ、生きる力を奮い立たされ、今日の私があります。
その古老の人たちにとって今、仕事を持ち、喜んでもらえることで世の中と関わりを感じられることが大きな支えとなり、手仕事は生きることそのものになっています。
  
店名にもなっていますが、“ゆずりは”という木があります。葉をつけたまま冬を越し、春、新芽が出揃うとそれを見届けたように葉を落とします。次世代に命を育み、つなぎ、自ら潔く次の生き方を見出すかのように…これは私たちの祖先が数百年の時を超えて育んできた手仕事に新たな命を吹き込み、若い世代に引き継ぐことと同じです。そしてそれは、私たちの人生においても同じこと。“生き抜いてみせること”、これが私たちの役目ではないかと思います。
                                                     (
2007.07.30 構想日本JIメールより)


2007年6月8日発売 主婦と生活社より
 

*田中陽子(たなかようこ)プロフィール
 
1955年、青森県生まれ。暮らしのクラフトゆずりは店主・十和田観光ホテル女将。青森・秋田・岩手3県をはじめとする東北の手仕事を、モダンな感覚で紹介し続けて20年余り。NHKの番組『ビジネス未来人』で特集されるなど、新聞・雑誌の各メディアでその活動が取り上げられている。東北を愛する真摯な気持と、現代風のセンスが相まって生まれる「ゆずりは」ならではのセレクトされた作品の数々は、全国に多くのファンをもつ。2005年2月東京・原宿に「ゆずりは」姉妹店となる「ゆい」をオープン。また毎月企画展を開催し、全国各地へ。手仕事の心を語り伝えるために、十和田(青森)から、東京、さらに全国各地へと、多忙な日々を送る。著書に今年6月に出版の『ゆずりはの詩』(主婦と生活社)がある。
※『ゆずりはの詩』(田中陽子著/主婦と生活社)
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